【中国越境EC】市場成長性や事業参入の方法について詳しく解説


近年、驚異的な拡大をみせている中国E C市場。
本記事では、中国越境E Cを考えている企業様に向けて、中国E C市場の成長性・参入方法について解説しています。

    テクノロジーの発達に伴って、世界のEC(Electronic Commerce)市場は年々拡大の一途をたどっています。
    「ZION Market Research」の発表したデータによると、2020 年の世界の越境EC市場規模は9123 億 US ドルで、
    2027年には、4兆8561億ドルにまで規模が拡大すると予測が立てられています。(下図)



    このデータからも、「EC事業」は、今後のビジネスのあり方を大きく変えていく可能性を秘めていると言えます。

    本記事では、中国におけるEC市場の将来性について述べた上で、
    中国越境EC市場への5つの具体的な進出方法について解説させていただきます。

    中国越境ECをお考えの企業様はぜひご参考ください。 

    中国越境ECの可能性

        経産省の発表によれば、2018年の日本においては、BtoCのEC市場規模は17兆9845億円で、年間の成長率は前年比で約9%となっています。

        ですが同じく、2018年の中国のEC市場規模は、日本の約10倍、167兆2110億円と推計されています。

        つまり、中国のEC市場へと事業進出、適切な施策を打つことで収益の大幅な増大が見込めるのです。 

        中国EC市場の規模

        同様に、2019年においても、中国のEC市場規模は1兆9348億ドル、日本円にすれば約212.8兆円(1ドル110円換算)と推計されており、
        アメリカのおよそ3倍の規模を展開しています。

        また、「eMarketer」が2019年に発表したデータでは、中国のEC市場規模は下図のように拡大していくとの予測が立てられています。 

         このデータからも、今後の中国におけるEC市場の成長率が極めて高いことがお分かりいただけると思います。

        日本企業が中国越境ECを行う利点

        「iiMedia Research, "2019 China Cross-Border Ecommerce Development Trends Research Report," Dec 25, 2019」の公表している
        「中国の消費者が越境EC事業者に望む改善に関するアンケート」データによれば、「商品が本物であること」「多様な商品を提供すること」「商品の品質改善」といった意見が上位に上がっています。

         
        つまり、中国の消費者は、本物で質の良い商品の多種展開を望んでいると考えられます。

        また、野村総研が「天猫イノベーションセンター」と共同で作成した「中国EC市場白書」によると、2019年上期における、中国EC市場での日系商品のシェアはまだまだ低いことがわかります。 

        ①今後の市場成長幅が大きい。
        ②顧客のニーズ(本物であること、商品の多様化など)が日本の商品と合致している点が多い。

        上記のような観点から、日本企業の中国EC市場おけるポジションには優位性があると考えられます。

        中国市場への越境ECによる進出方法

          中国越境ECが成長可能性を秘めていることを理解していただいた上で、本章では中国市場への越境ECによる進出方法について解説していきます。

          中国市場への越境ECによる進出方法は具体的に5種類です。

          1.自社越境ECサイトの作成

          2.日本国内ECモールの活用


          3.中国国内ECモールの活用


          4.一般貿易型のEC販売


          5.中国法人設立によるECサイト展開 

          1.自社越境ECサイトの作成

          概要・・・日本国内に越境 EC の自社サイトを作成する事業モデルです。

          1からサイトの作成、もしくは元々日本語で提供している自社 EC サイトに中国語や英語での案内も加えることで、中国越境 EC に対応させます。

          中国ユーザーが自社サイトを訪れ、商品購入の注文が入り次第、国際配送サービス等を利用して現地に直送するシステムです。

          簡単に言えば、我々が海外サイトでものを購入する要領で、中国の方にも同じことを行なってもらうというわけです。

          メリット・・・E Cプラットフォームを活用する際の決済手数料や掲載料をはじめとした、システム利用料がかからないため、売り上げの最大化が見込めます。

          また、顧客情報や売り上げ情報などの直接的なデータ取得が可能なため、今後のマーケティング方針を決定しやすいといったメリットもあります。

          プラットフォーム販売ほどスケールはできませんが、実績ベースで毎月売上100万円を安定的に出している日本の会社も存在します。

          デメリット・・・中国の電子商取引法に抵触しないようなサイト構築が必要です。

          また、サイトの多言語化や、中国での知名度を向上させるためのSEO対策など、集客に時間がかかります。

          加えて、倉庫の場所や現地で使用するサーバーの選定、現地での物流網なども、全てを準備する必要があります。

          以上の点から、ECサイト開発は専門業者に任せるほうがこれらデメリットを解消できます。

          中国向けのサイト制作は中国の法律を理解する高度な専門知識が必要ですから、自社で開発は絶対に行わないほうがよいです。 

          2.日本国内ECモールの活用

          概要・・・日本国内の越境ECに対応したモールへ出店する事業モデルです。

          日本国内の消費者を対象とした出店の延長線という名目で海外消費者向けの販売が始まりました。

          自社越境ECサイトの場合と同様に、商品購入の注文が入り次第、自社から国際配送サービスによる直送を行います。

          日本側の企業は、日本国内モールへの出店と商品の発送を行えば問題ありません。

          メリット・・・国内ECプラットフォームを活用するため、自社の商品を出品するのが比較的簡単です。

          デメリット・・・元々は国内消費者向けであったこともあり、中国人利用者が少ない、中国における知名度が低いことが国内ECプラットフォームのデメリットです。 

          3.中国ECモールの活用

          概要・・・中国国内ECモールやECサイトに出店する事業モデルです。

          出店に際して、ECモール・ECサイト運営事業者との交渉が発生するため、現地の代行会社によるサポートを受ける場合がほとんどです。

          中国ECモールを活用する場合、2種類の輸送モデルが存在します。

          直送モデル」・・・中国の消費者が中国国内プラットフォームで商品を購入、注文情報が出店側に届き次第、現地に直送するシステム

          保税区モデル」・・・日本から現地に商品を直送するのではなく、中国の保税地区に商品をまとめて輸送、保管をし、注文が入るごとに、保税区から出荷していくシステム

          直送モデルと保税区モデルの違いは、税金の支払い義務がある対象です。

          前者の場合、輸入側である中国国内の購買者が輸入税を支払いますが、後者の場合は、まとめて商品を輸入した代行会社が税金を支払います。

          メリット・・・世界的に見ても大規模なプラットフォームが存在しているため、中国国内で知名度が低くても集客が可能です。

          中国国内ECプラットフォームの場合、出店条件はやや厳しいですが、出店後はその恩恵を十二分に活用することができます。

          デメリット・・・国外プラットフォームを利用するため、自社独自で、顧客や売り上げのデータを取得するのが困難となります。 

          4.一般貿易型のEC販売

          概要・・・一般貿易と同様に、日本国内の輸出者と中国のパートナー企業との間で貿易手続きを行い、中国国内のECモールやECサイトで商品を販売する事業モデルです。

          この形態の場合、出店側はあらかじめ中国内に出品している商品を輸出しておき、中国の消費者から注文が入り次第、中国現地から直送するシステムとなっています。

          簡単に言えば、中国の企業に商品を渡し、代わりに販売してもらうといったイメージです。

          メリット・・・現地のパートナー企業を介して商品を販売できるため、現地での知名度の低さをカバーすることが可能です。

          パートナー企業の集客力を利用できるため、商品の品質やニーズ次第では、初期段階から利益をあげることが可能でしょう。

          デメリット・・・この形態の場合、売り上げがパートナー企業の戦略に一任されてしまうため、現地のパートナー企業の選定が非常に重要となります。

          パートナー企業との綿密なやりとりが必要となる点では時間的なデメリットとなり得ます。

          5.中国法人設立によるECサイト展開

          概要・・・中国側で法人を設立し、現地で自社サイトを構築・運営する事業モデルです。中国への本格的な進出が決定しており、ある程度中国において自社商品のブランドが浸透している場合、有力な手段であると言えます。

          メリット・・・中国現地に法人があることで、現地の様々な機関と連携を図れるため、EC市場のニーズ策定や大規模な商品展開を行いやすいです。

          デメリット・・・中国法人の設立は、法務上の手続きが非常に煩雑です。一口に中国法人といっても進出の形態は様々ですので、情報リサーチから人件費の確保、税金対策など、資金面での負担が大きいため、試験的な運用を考えている場合にはオススメし難い手法であると言えます。



          中国市場への越境ECによる進出の仕方、そして、それぞれのメリット・デメリットについて理解していただけたでしょうか。
          次章では、実現可能性が最も高い「中国国内ECモールの活用」にフォーカスし、実際に中国のEC市場で大きなシェアを誇っている3つのECプラットフォームをご紹介します。 

          中国越境ECプラットフォーム①天猫国際

            「天猫(T-mall)」は、2012年1月に中国IT最大手の阿里巴巴集団(アリババグループ)によって開設された「BtoC」向けのECサイトです。経産省が発表した、2019年度の中国E Cプラットフォーム事業者のシェア推定では、アリババグループが中国国内シェアの55.9%を獲得しています。

            「天猫(T-mall)」は大きく分けて、中国国内向けの「天猫(T-mall)」と、海外法人向けの「天猫国際(T-mall Global)」の2種類が存在します。日本企業の場合は、海外法人向けである「天猫国際(T-mall Global)」のみ利用することが可能です。

            「天猫(T-mall)」と「天猫国際(T-mall Global)」を合わせた出品者数は約5万、ブランド数ベースだと約7万ものブランドが流通しています。

            また、2017年のデータでは、累計流通額約84兆円(「天猫(T-mall)」と「天猫国際(T-mall Global)」の合算)という驚異的な数字を見せました。
            同年の「楽天」の累計流通額が3兆3912億円、「Amazon」の累計流通額が2兆686億円であることを鑑みると、「天猫(T-mall)」のEC市場規模がどれだけ大きいかを理解していただけると思います。

            こういった実績から、アリババグループの運営する「天猫(T-mall)」及び「天猫国際(T-mall Global)」は、世界最大級のECプラットフォームとして認識されています。


            必要な費用
            「天猫国際(T-mall Grobal)」の利用に必要な費用は以下の通りです。(「天猫国际资费标准」より引用・翻訳)

            ・保証金(保证金)
            出品者が何らかの違反をし、「天猫国際(T-mall Global)」および消費者が不利益を被った場合に発生する費用です。費用は出品する商品カテゴリによって変動し、15万人民元(253万円)もしくは30万(507万円)人民元であることがほとんどです。取引に全く問題がない場合、保証金として預けていた金銭は全て返却されます。

            ・技術サービス年会費(技术服务费年费)
            出品するカテゴリーによって、3万人民元(50万7,000円)もしくは6万人民元(101万4,000円)が徴収されます。

            ・商品販売手数料(实时划扣技术服务费)
            出品するカテゴリーによって、商品販売額の2%もしくは5%の金額を商品販売手数料として徴収されます。

            メリット・・・「天猫国際(T-mall Global)」は、約6億人のアリババユーザーをカバーしているため、出店に成功すれば、大規模なユーザーを獲得することが可能です。
            また、アリババ系EC消費行動データや、収集データを全面的にカバーしているため、データの分析結果をプロモーションに直接導入することが可能です。

            デメリット・・・「天猫国際(T-mall Global)」では、上述したようにプラットフォームの利用に際して、比較的高いコミッションを要求されます。商品を出品しても全く売れない場合は、高い維持費だけがかかってしまうため、出品する商品の選定は慎重に行う必要があります。 

            天猫国際の具体的な出店方法については、こちらからご確認ください。

            中国越境ECプラットフォーム②京东国际

              中国EC市場シェアで先述の「天猫(T-mall)」に次ぐ第2位にいるのが「京東商城(JD.com)」です。
              「天猫(T-mall)」と同様、「京東商城(JD.com)」は中国国内向けのプラットフォームで、海外事業者には、「京東国際(JD Worldwide)」というプラットフォームが提供されています。

              前述した「天猫(T-MALL)」は、各企業にオンライン上でマーケットプレイスを提供し、出店者から出店料を徴収する、日本でいう「楽天」型の事業スタイルをとっています。
              ですが、「京東商城(JD.com)」では、自社モール内で商品を仕入れて「京東国際(JD Worldwide)」名義で販売する、「Amazon」と同様の直販スタイルを採用しています。

              「天猫(T-mall)」では、美容関連用品が人気ですが、「京東国際(JD Worldwide)」では、電化製品が人気を博しています。
              また、アリババグループとは異なり、実店舗を構えることで、ネットだけでなくリアルでも購入ができるバリューチェーンを構築しています。

              実際に、経産省が発表した2019年度の中国E Cプラットフォーム事業者のシェア推定では、京東グループはアリババに次いで全体の16.7%のシェアを獲得しています。
              中国ECサイトの2強は、異なる事業スタイルを持って中国国内の越境EC市場を席巻していると言えます。


              必要な費用
              「京东国际」の利用に必要な費用は以下の通りです。(「2021年京东国际开放平台各类目资费标准」より引用・翻訳)

              京東国際では、保証金(保证金)、プラットフォーム使用料(平台使用费)、商品販売手数料(费率)を設定しています。

              ・保証金(保证金)
              出品する商品のカテゴリーによって、1万5000ドル(165万円)か3万ドル(330万円)の費用がかかります。

              ・プラットフォーム使用料(平台使用费)
              出品する商品のカテゴリーに関わらず、一律で1000ドル(11万円)の費用がかかります。

              ・商品販売手数料(费率)
              商品販売手数料は「A+B」体制をとっています。(「A」は一般的な商品取引手数料、「B」はリターンフレームレート)。

              商品広告の際に「京准通」という京東グループのプラットフォームを利用した広告費が「四半期売り上げ×リターンフレームレート」よりも低い場合、差額を支払うという方式になっています。
              (「京东国际开放平台“A+B”费率实施细则(新版)」より引用・翻訳)

              例えば、商品Aの手数料が「3+2」%、商品Aの四半期の売り上げが200万円だとします。
              この場合、「A+B」体制のA、つまり通常の手数料は3%なので、四半期で200万円の売り上げだとすると、6万円の手数料がかかります。
              さらに、Bのリターンフレームレートは2%なので4万円です。「京准通」という京東グループのプラットフォームを利用した広告費が4万円に満たない場合は、その差額を支払い、仮に4万円以上を広告費として使っていれば、この4万円は支払わなくてすみます。 

              京東国際の出店方法については、こちらからご確認ください。

              中国越境ECプラットフォーム③淘宝

                「淘宝(タオバオ)」とは、中国IT最大手の阿里巴巴集団(アリババグループ)が2003年に設立した「CtoC」型を軸としたオンラインショッピングモールです。

                「淘宝(タオバオ)」は「天猫国際(T-mall Grobal)」や「京東国際(JD Worldwide)」のようなBtoC型のオンラインショッピングモールと違い、個人間での取引を行います。個人間取引が可能である分、幅広い販促方法があるのが特徴です。

                2020年のアリババグループ財務報告では、「淘宝(タオバオ)」の月間アクティブユーザー数は7億4,000万人に達したと報告されており、「淘宝(タオバオ)」のアクティブユーザーは年々増加の一途をたどっています。

                「淘宝(タオバオ)」は、条件を満たせば個人での出店も可能で、商品の取扱数やジャンルも幅広いのが特徴です。日本の例で例えれば、「メルカリ」や「ココナラ」を足し算したような形態で、モノだけでなく「翻訳」や「画像・動画編集」といったスキルの販売まで可能なECプラットフォームです。



                必要な費用
                「淘宝(タオバオ)」では、登録費用や月額費用、販売手数料は一切かかりません。

                メリット
                決済システム・・・「淘宝(タオバオ)」では、ユーザーが支払った代金は、一旦タオバオのプラットフォーム側にデポジットされます。そして、購入者が商品を受け取った後に、売り手にお金が渡るシステムを導入しています。
                そのため、偽物や粗悪品が横行しがちな中国のECプラットフォームでも、ユーザーからの圧倒的な信頼と安心感を獲得しています。

                ライブコマース機能
                「淘宝(タオバオ)」では、K O Lと呼ばれるインフルエンサーがライバーとなり、生放送で実演販売を行う「ライブコマース機能」が導入されています。ライブコマース機能の導入により、Photoshopによる商品画像の加工や、商品偽造の心配が払拭され、ユーザーの満足度に繋がっています。

                デメリット
                2018年以降、「淘宝(タオバオ)」に出店する際の制限が厳しくなり、中国の銀行口座開設が必須となりました。
                「淘宝(タオバオ)」の取引で得た売上代金の受授は中国系銀行の口座でしかできず、決済に使用するAlipayに登録できる口座も中国の銀行口座のみです。
                中国銀行口座の開設には、中国の住所証明や労働証明が必要になります。そのため、海外の事業者や個人が「淘宝(タオバオ)」に出店するのは困難となっています。
                現在では、銀行口座開設から在庫管理を代行してくれる現地中国企業に依頼をするしかない状態です。 

                中国市場への越境EC進出方法「まとめ」

                以上、本記事では中国市場への越境EC進出方法について解説しました。

                冒頭でも述べた通り、中国のEC市場規模は現在も拡大を続けています。そのため、これから中国進出を考えている企業様にとって、
                中国でのEC事業展開が大きな鍵を握るといっても過言ではありません。

                中国EC市場に進出するために、越境ECプラットフォームの活用、もしくはその他の方法を活用、いずれにしても中国現地の情報収集は欠かせません。
                また情報収集したとしてもそれに基づいて正しい意思決定が必ずできるというわけでもありません。

                ただし、本記事でも解説した通り、一口にEC事業を展開するといっても方法や注意点は様々あります。
                中国越境ECの展開について、「自社はECで進出したほうがいいのか?」「どのプラットフォームが最適なのか?」「商品のニーズは中国でどれくらいあるのか?」といった疑問は、一度弊社へお問い合わせください。 

                パルの中国越境ECテストマーケティング

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